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第8話

「お休みもらうねーー」  と連絡が来てから3日山田は出社していない。正直、別段困ってはいない。しかしそろそろ捕まえないと最終決定事項が溜まってきているな。 「八魂ちょっといいかな?」  引きこもりが開発部から顔を出して俺を呼び止めた。 「なんですか?」 「俺が口出すことじゃないんだけどさーー山田が抜けてもこの会社大丈夫なのかな?」 「なんの話ですか?」 「逃亡するかも知れないから」 「はあ? 社長がですか?」 「杞憂かも知れないけど、元々あいつかなり自由な奴だからさ。正直良く10数年も同じ場所に居たって思ってる」 ***  深森の心配もあるし、そろそろ戻そうと連絡を入れたが電話もメールも完無視だ。山田のくせにどう言うことだ! 『大丈夫かどうか?』だと。    あいつがぷらぷらしている間に俺が完璧にお膳立てしてやった案件を、あいつは最後に菓子をボリボリ食いながら書類にシミを付けて見散らかして、いいとか悪いとか言うだけだ! いいご身分だ!  しかし、一度たりとも選択を違えたことはない。  俺が流石に難しいんじゃないかと反対した案件も押し通して全て成功させてきた。  あいつの長所なんて、そこだけだ。しかしそこをかったんだ。  俺の完璧な人生設計を覆してまで! *** 「深森ーー!」  呼ぶと、開発部の椅子の上で深森が跳ねた。 「社長のタブレット、追跡できますよね?」 「……イヤ、それ違法だか……」  振り返りながら深森が言いかけた。この非常時に何を言ってるんだこの男は! 「出来ますよね?」 「は、はい」  言うと、パソコンに向かって調べ始める。初めから黙ってやれ! 「羽田にいるみたいです」  羽田? 本当に逃亡する気か? 「今から追いかけます。そのまま追跡して移動したら私の携帯に居場所を入れて下さい」 「わかりました」  開発部を出る時『頑張って下さい』と後ろから深森の声がした。頑張るってなんだ? 意味がわからん?

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