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第9話
空港に着くと深森から山田の現在地を知らせるメールが届いていた。第一ターミナルの展望デッキか……。
「山田ーー!!」
呼ぶと子供のようにデッキから飛行機を眺めている山田が振り向いた。
「凛ちゃん。なんでいるの?」
なんでじゃねーーなに呑気にソフトクリームをベロベロ食っているんだ。ふんだくって理解するまでその口に捩じ込んでやろうか?
「なんで空港にいるんですか?」
「ちょっと北海道にでも行こうかと思ってーー」
「何社長が勝手なこと言ってるんですか? そろそろ会社に戻ってください」
「……凛ちゃんホントのこと言っていいよ。別に俺が居なくても会社回るでしょ?」
う……否定はしきれないが、そういうことじゃないんだ。
「だから俺、会社辞めて旅にでも出ようかなーーって思ってるんだよねーー」
プツ……っと自分の中で何かが切れる音がして、次の瞬間、思いっきり山田の腹に蹴りを入れてしまっていた。
「凛ちゃん、痛いーー」
山田はうずくまって腹を押さえてる。頭に血がのぼり過ぎていて、もう2、3発入れたい気分だが、これ以上やると殺人になってしまう。
「ふざけるなよ! このクソガキ! あの会社はな回ればいいってもんじゃないんだ! 回ればいい会社で働きたいんだったらもっともっと大きな会社に行って悠々と仕事してたんだ! あの文化祭でお前たちの才能に惚れ込んだから、それを最高に生かすためにインフォーマルを作ったんだろう! なのに肝心のお前が居なくなるとは何事だ!!」
「凛ちゃん……」
山田は倒れ込んだままびっくりした顔をして自分を見上げた。まただ、また知らない内に涙が流れていた。
「ごめんーー!! ごめんねーーーー!!」
俺より号泣して山田が抱きついて来た。空港のデッキで中年の男二人が号泣して抱きあってるなんてとんだ見せ物だ。どうしてくれるんだ? ホントにこいつといると人生が狂いまくりだ。
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