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第4話 オフで会いましょう(1)

 何だかんだ言いつつも二日に一度俺を誘ってくれるアイコさん。そして彼女……じゃない、彼の機嫌を何かと損ねがちな俺。前だったら聞こえなかった、出来れば聞きたくなかった本音がイヤホンを通してビシバシ聞こえてくる。  でも俺以外のことでもアイコさんは結構ジタバタしてる人だった。『もー何コイツ、きらーい!!』という女子のような文句とか、『やった物資! いただきィ~』という小学生のような喜びの声、うっかり操作ミスしてダウンし、悔しさのあまり膝かどっかを叩いて暴れる音、ポテトチップス的なものを食しているらしいボリボリ音。今日は缶をパキッと開け、ぐびぐびと喉が鳴る音が聞こえたと思ったら『うい~』というおっさんのような声を上げた。 「何飲んでるんですか?」 『酎ハイで~す』 「おいしいんですか?」 『飲んだことないの?』 「俺、酒飲めないんですよ。一口飲んだら目回して倒れます」 『カワイソ』  全然かわいそうとも何とも思ってなさそうに言い捨て、『さあやるかヘタレども~。お前ら全員、今日の俺のストレス解消のために死ね~』という聞いててヒヤヒヤするような毒を吐きながらヘリから降下した。  俺は彼をフォローしてる状態なので、基本この間何もしなくていい。航路から目標地点を設定してうまいタイミングでヘリから飛び出すのも、パラシュートを操作しつつ周囲の敵を数えて一番武器を拾えそうなポイントに降り立つのも彼。実写で再現したらパラシュートをあやつるキリッとした女に男がダラーンと猫のようにだらしなくぶら下がってる構図になる。  俺と二人のときはボイスチャットをオンにしているが、スクアドで他人が入るとマイクを切って黙ってしまうのも「え?」と思う。何で突然人見知り? あんまり聞くとウザがられて超激戦区にパラシュート降下されるというとんでもない罰を与えられるので黙っているが、たぶん人見知りなんじゃないか。内弁慶はたまに聞くが、ゲーム世界特有のフレンド弁慶なんてのもあるんだな。まあマッチングでたまたま会った知らない人間に暴言吐いたら、最悪アカウント停止だしな。だんだん彼の手厳しさと気まぐれに慣れてきた俺だった。

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