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第6話(2)

「えっ?!」  自分の声に驚いて目が覚めた。視界は暗いが自分が布団の中におさまっているのはわかる。目が慣れ、窓の外が少し明るくなっているのに気付いた。朝四時くらいか。 「……夢か……」  ガッカリして掛け布団をぎゅっと握りしめる。むっ、むなしい……! そして切ない。何か知らんが無性に切ない。あんまり夢がよすぎて、現実世界に戻ってしまったことが悲しかった。  にしても何なんださっきの夢は。あれが俺の願望だってのか? でもそうなんだろう、何せ夢の中の俺は楽しかったしうれしかったし幸せだった。アイコさんがニコニコして優しくしてくれて、俺のために好きな食い物とか用意してくれて。  アバターでないほうの実体のアイコさんは、アバターよりもずっといい感じだった。手足が自由に動いて表情も豊かで、俺のためにチキンを紙に包んで「はい」と渡してくれる。現実じゃねえんだけど。

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