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第4話(視点なし)
握手会の会場に一人の少年が現れると周りの客やアイドルまでも目を見開く。
自分でも目立つとは思うがさっきまでライブを見てたのに気付かなかったのかと苦笑いする。
握手会はメンバー全員と握手して好みのメンバーにサインを頼んだり出来る。
だからか握手券つきのチケットは普通より少々高い。
少年はアイドルグループが所属してる会社の社長にタダで貰ったが…
他のアイドル達と握手するとなんか妙にキャッキャッはしゃいでいて、なんか他の客に申し訳ない気持ちになった。
「いつもありがとうございます~」
「サイン、お願いしたいんだけど…とびきりいいやつ」
彼にあげるサインだから一生に残るものが好ましいと思い目の前にいるAIを見た。
するとAIは小さく笑った。
「今日は仕事で来れないって言ってたのに来たと思ったらサインが欲しいなんて」
「いつもの気まぐれだよ、それより早くして…つっかえてるから」
少年の後から客が睨みながら見ているからAIを急がすといつもの営業スマイルで素早くサインを書き「また来て下さいね~」と言って色紙を渡してきた。
名前入りのサインが良かったなと思いながら名前を聞く事を忘れてた自分に落胆した。
もっと彼が喜んでくれたのかもしれないのに…
初めて彼を見た時、前髪が長くて正直あまり表情は見えなかったが、髪の隙間から見えた瞳があまりにも綺麗な黒い瞳で一瞬で魅入られた。
だからかコンサート中もAIを見に来たのに必死に応援する彼に目が離せなかった。
彼が喜ぶならと今まで行った事がない握手会まで行った。
容姿は特別美しいわけでもない彼にここまで惹かれるなんてと思いながら彼が待つ場所まで向かう。
「ちょっとAI!誰あの超イケメン、AIの彼氏じゃないよね!?」
「ふふ…」
握手会が終わると他のメンバー達がAIの周りに集まってくる。
それが面白くてAIは笑った。
いつも一緒に歩くと恋人に見られてしまう、美人に生まれた自分が憎いなんて笑いながら思っていた。
「ご紹介が遅れましたわ、私のお兄様です」
その時の少女達の驚く顔はAIの脳内にある面白顔アルバムに入れられた。
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