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第8話

昨日は大変だったなぁ…キーホルダーを探しに行きまさか友達が出来るなんて… そういえば俺がジャージ姿だったの…柚月くん最後まで聞かなかった。 単に部活帰りかと思ったのか、それとも…なんか察してくれたのかな? こっそりクリーニングに出して帰ったから母さんにはしつこく聞かれたが、部活始めて学校に制服忘れたと嘘を付いた…そんなに誤魔化すネタがないから考えるのが大変だ。 …でも、迷惑掛けたくないんだ…ごめんなさい。 自室に戻るとスマホを開きコウくんに電話した。 コウくんにも柚月くんの話をしたかったから… しかしコウくんは出なかった。 もしかしてコウくん、部活でも入ってるのかもしれない… 出来れば声を聞きたかったがメールで簡単に「今日、同じAIちゃんファンの柚月くんという友達が出来ました」と報告した。 その日は結局コウくんからの返事はなかった。 そして翌日、俺は決して一人じゃ踏み入れないオシャレなカフェのテラスで座っていた。 ジャージ姿で学校に行ったから千早くん達には馬鹿にされ、先生にも怒られた(でも、家族には連絡しないみたい…イジメがバレるもんね) いつものように虐められ放課後になったらさっさとカバンを持ち学校を出た。 今日は本屋に寄ろうかなと考えていた。 別になにかの発売日とかじゃないが、暇潰しで本でも読もうかと思っていた。 コウくんがメールを返してくれない事が不安だった。 どうしたんだろう、忙しかったのかな…もしかしてなんか怒らせるような事書いたっけとメールを何度も見直し、ぐるぐる悩んでいた。 そして本屋が見えたところで誰かに首筋を触れられ、ひやりとした感触に驚いた。 もう暑い季節だからかびっくりしたが、ちょっと気持ち良かった。 「だっ、誰!?…コウくん」 「遥…」 思いっきり後ろを振り返るとサングラス姿のコウくんがいた。 コウくんのサングラスって日除けなのかな?素顔も見てみたいな。 後ろをチラッと見ると下校中の女子高生達がコウくんを見てはしゃいでいた。 コウくんカッコイイから人気あるよね。 「凄いね、コウくん人気者だ…今帰り?」 「…うん」 そこで俺はやっとコウくんの異変に気付いた。 …あれ?なんか元気ない? なにかあったのかな?だからメールも返せなかったのかな? 俺は頼りないけど、出来るかぎりの事をしたいと思ってるんだけどな… 声を掛けてくれた(というか首を触ってきた)から一人にしてほしい訳じゃないと思うから俺はコウくんを見た。 「コウくん、どうかしたの?俺で良ければ話してくれないかな…無理にとは言わないよ」 「…遥」 「うわっ!!」 いきなりコウくんに抱きしめられて驚いていて顔が赤くなった。 そして周りがざわざわと騒いでいた。 やばい、変な噂が流れたら俺はいいけどコウくんが大変だ。 とりあえず静かな場所で話そうと目に入ったカフェを指差す。 そしてコウくんが俺から離れる前に囁いてきてまたビクッと身体が跳ねた。 「遥がいけないんだよ…」 「…え?」 コウくんの言ってる意味が分からず首を傾げていると、コウくんに恋人繋ぎで手を繋がれカフェに向かう。 そして… 「…遥?」 「あっ!柚月くん!」 俺を呼ぶ声がして立ち止まりそちらを見ると、カフェの近くを丁度通ろうとしていた柚月くんがいた。 俺は柚月くんに手を振っていたからコウくんがどんな顔をしていたか分からなかった。 「…友達?」 「うん!昨日メールした柚月くん、メール見てくれた?」 「……」 コウくんは静かに頷いた。 結局サングラスが邪魔でどんな顔をしているかよく分からなかった。 柚月くんが俺達の方に来た。 そうだ、柚月くんとコウくんも仲良くなってほしいから一緒にカフェに誘うと柚月くんは嬉しそうに頷いた。 微妙な表情の変化だが、何だか柚月くんの気持ちが分かるようになった気がした…まだ早いかな? そしてずっと俺しか見えてなかったのか、やっとコウくんに気付いた。 嬉しいとはちょっと違うような、あれ?この柚月くんの気持ちは分からないぞ? そしてずっと繋がった俺達の手を見ていた。 「……手」 「えっ、あ…もう離してもいいよ?」 柚月くんに言われて急に恥ずかしくなり、俺が迷子にならないように手を引いてくれた…と思うからもうカフェは目の前だから離していいよという意味で言うと何故か手をさらに握られた。 そして何故か柚月くんの顔が険しくなった。 しばらくそうしていると、さすがに目立つ二人…注目を集めてしまい逃げるように二人の手を引き中に入った。 店内には席はなく仕方なくカフェテラスに座った。 このカフェには同じ学校の制服は見当たらないからホッとして、通りすがりにもいないかとビクビクして空気になる努力をした。 しかしコウくん達は空気になるのを許してくれなかった。 「…遥、コイツは?」 「あ、コウくんって言って同じAIちゃんファンなんだよ!だから二人にも友達になってほしくて…」 「…そうか」 柚月くんは興味なさげにコウくんを見る。 コウくんはまだ俺の手を握ってる…他の人には注意して見ないかぎり見えないが、恥ずかしい。 AIちゃんの話題に一人だけはしゃいでいて、二人の空気がなんか重く冷たい。 あ、そうだった…コウくん…悩みがあるのに初対面の柚月くんの前で話しづらいよね。 コウくんに酷い事をしてしまったと一人落ち込んでいたら二人は会話を始めた。 「…お前、どっかで見た事あるな」 「残念ながら、俺には野蛮な男は知り合いにはいないよ」 「……」 「……」 なんか睨み合ってない!?

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