14 / 17

第14話

目の前が真っ暗になった。 僕の手から大事なものが消えていく。 ……僕の 「…あ、あぁ…」 「ちょっと…どうかしたの?兄様」 隣から雑音が聞こえる。 いや、周り全ての音がノイズになってうるさい。 うるさいうるさいうるさい… 僕は雑音から逃げるように走り出した。 周りがこちらを見てる気がしたが、人間の顔が全て黒く塗り潰されたように見える。 とっくに痛みが引いた筈なのに…彼に拒絶された手が痛い。 痛い痛い痛い痛い痛い… 死んでしまいたいほど…心が痛い。 「あ……ああああああああっっっ!!!!!!!!」 叫ぶ、叫ぶ…悲痛な僕の声は彼に届かない。 喉が潰れるほど叫んだら囁き程度には彼に届くかな。 「にっ、兄様っ!!何してんの!!」 誰もいないだろう路地裏の奥まで来たのに…誰かの声がした。 振り返るのも面倒で無視をしたら、無理矢理顔を向けられた。 ……顔が分からない、誰だ? 「あんなに叫んだら兄様の喉が潰れてしまうわ!」 「……潰れる?それが?」 「それがって…兄様はモデルだけじゃなく、俳優もCMだって出てるじゃない!喉を大切にしないと…」 「だから?伝えたい事も伝えられない喉なんて必要?…拒絶された僕は…ひつよう?」 「……にい、さま?」 僕は何のために芸能界に入ったんだっけ? どうでもいい、何もかもがどうでもいい。 彼に愛されない僕は……いらない。 「兄様、あの少年とどういう関係なの?」 「……分からない、何だろう…友達?」 そう自分で言って自然と笑えてくる。 彼への感情が友情なら今まで友達だと思ってきた奴らはいったい何だったんだろうか。 …友達に拒絶されたくらいでこんなドス黒い感情が出るか? 今までの僕ならたとえ親友でもすぐに縁を切る。 …僕を変えたのははるか、君なんだよ 「……早く、行かなきゃ…悪い奴に騙されて傷付けられちゃう…僕が守らなきゃ、僕が…」 フラフラと路地裏を出ようとする僕を誰かが腕を掴み引き止める。 誰だか分からないけど…僕とはるかの中を邪魔する悪い子なのかな。 「ダメっ!!今の貴方を一人にするわけには…」 「……じゃま、しないでよ」 「…っ!?」 本当は排除したいけど、見ているだけの筈なのに僕を引き止める人物は酷く怯えていた。 顔は相変わらず分からないけど、僕を掴む手が震えていた。 軽く腕を振るうと手が離れた。 きっと、もう邪魔しないだろう。 僕は一度も振り返らずに路地裏から出た。 遥、はるかはるか……早く、会いたい。 はるかが悪い子になってしまったからちゃんといい子に治さなきゃ… 大丈夫、はるかが怖いものは僕が全て消してあげる。 はるかがほしいものは全て与えてあげる。 ……だからお願い、僕から逃げないで… はるかに連絡しようとポケットに入れた筈のスマホを探した。 「……あれ?」 何処を探してもスマホはなかった。 周りが見えなかったから落としたのも分からなかったのか。 探しに行こうとしたが、その間にはるかがいなくなるかもしれないと思い、はるかを探しに向かった。 はるかを探す手段はいくらでもある。

ともだちにシェアしよう!