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第二章・4
「うわぁ! 夜景がきれいですよ!」
「気に入ってくれたか」
せっかくの七夕が雨になったから。
「地上の天の川を、君に見せたいと思ってね」
「ありがとうございます」
夢中で街のきらめきを見下ろす幸樹の肩を、玄馬はそっと抱いて引き寄せた。
「カフェで、私のことを素敵だ、と言ってくれたね。今も、そう?」
「え?」
「私は、極道者だ。九丈組の、頭だ。それでも、私は素敵かな?」
うまく言えませんが、と前置きして、幸樹は答えた。
「そういう肩書を忘れてしまう何かを、九条さんは持っています。強く、惹かれます」
「ありがとう」
そこで玄馬は、幸樹に静かに顔を寄せた。
「え? あ、あの。九条さん……?」
玄馬は幸樹に、口づけていた。
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