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第三章・5

 幸樹は、シンデレラボーイだ。  門限は、午前0時。  それを破ると、遠山のお説教が待っている。  大学生になった幸樹は、一度だけその門限を破った。  コンパで酔いすぎて、具合の悪くなった先輩を介抱していたら、遅くなってしまったのだ。  理由がきれいなので、遠山はひどく彼を責めはしなかったが、その悲しそうな目が幸樹にはこたえた。 (遠山さんに、こんなに心配かけて。僕はなんて悪い子なんだろう)  もうあんな目を見たくはなかったので、幸樹は23時にはカフェへ帰ってきた。  玄馬の車で、だ。 「ここでよかったのか?」 「二階が、家になってるんです」  じゃあ、と幸樹はナビシートから体をずらした。 「キリマンジャロ、1000円。確かにお受け取りしました」  いたずらっぽい響きの声に、玄馬もつい笑顔になった。 「また、会ってくれるかな?」 「喜んで」  いい返事に、玄馬は運転席から体を乗り出した。

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