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第三章・6

「おやすみ、幸樹」  ちゅ、と短いキスをひとつ。  照れて目だけを下向く幸樹が、本当に可愛い。 「おやすみなさい、玄馬さん」  名残惜しく、二人は別れた。  まだ明かりのついている、カフェの一階。  そこに、幸樹は消えていった。  見届けるまで、玄馬は車を出さずにいた。  やがて一階の電気は消え、代わりに二階の明かりが灯った。  そこまで見届けてから、深い溜息をついた。 「まいったな……」  今さっき別れたばかりなのに、もう会いたいなんて。 「幸樹も、同じ気持ちでいてくれるんだろうか」  何だ、この妙に甘酸っぱい気分は。 「お子様色に、染められたか?」  だが、悪くない。  玄馬の機嫌は、ひどく良かった。

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