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第三章・7
幸樹は、改めて家のバスを使って疲れを癒していた。
「まさか、会ってその日に初体験までしちゃうなんて」
思い出すと、身体が疼く。
頬が、ぽぅっと火照ってくる。
大人の、素敵な人だった。
この人になら、許せると思った。
「ああ、どうしよう。恋しちゃったんだ、僕」
七夕の日に、恋が始まるなんて!
「あ、でも。一年に一度しか会えなくなると、嫌だな」
あの人になら、毎日でも会いたい。
「九条さん。……玄馬さん」
いつのまにか姓でなく、名前で呼んでいた。
だが彼は、それを咎めはしなかった。
「僕のことも、幸樹って呼んでくれたし」
居ても立っても居られなくなり、幸樹はバスタブから飛び出して冷たいシャワーを浴びた。
そうでもしないと、身体の、心の火照りは鎮まらなかった。
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