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第三章・8
遠山は、なかなか風呂から出てこない幸樹を思い、やきもきしていた。
確かに、門限は守った。
だが……。
「我が家のシャンプーと違う匂いが、幸樹くんからしていた!」
まさか、あの極道と食事だけでなく、つまり、その。
(体の関係まで、持ってしまったのでは!?)
そんな恐ろしい思いまで抱いたところで、幸樹がバスルームから出てきた。
「幸樹くん」
「どうしたんですか?」
切羽詰まった遠山の視線に、幸樹はまるで無防備だ。
「あのヤクザとは」
「九条さん、です」
「その九条さんとは。食事だけで帰って来たんだな?」
「お茶もしました」
幸樹の返事は、あどけなくピュアだ。
だからこその怖さを、遠山は感じていた。
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