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第三章・9

「お茶にしては、少し遅かったんじゃないのかな?」  すがるような遠山の視線に、幸樹はようやく思い当たった。  だが、彼をこれ以上心配させたくはない。 (玄馬さんとエッチしちゃったことは、言わないほうが良さそう) 「たくさん、お話ししましたから。九条さんに、励ましてもらいました」 「励ます? 極道者が?」 『僕、一度でいいからお会いしたいんですけど』 『何か、理由があるんだろう。生きてさえいれば、いつか会えるよ』  会ったことのない父に、いつか会えると言ってもらえた。 「職業はヤクザさんかもしれません。でも九条さんは、優しい人です」 「幸樹くん。ヤクザはね、優しい甘い言葉で、被害者をだますんだよ?」 「被害者だなんて。僕、何にもひどいことされてません」 「今からのことを考えて、だ。もう、彼には会うんじゃない」  返事が、無い。  いつもいい返事をよこす幸樹が、唇を結んで答えない。 「幸樹くん……」  しとしとと降る外の雨は、遠山の心を不安に浸していた。

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