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第四章・3

 新庄の報告に、玄馬の横着な態度に、遠山は苦い顔をした。 「また嫌がらせか。そんなことをしても、私はこの店を絶対に離れないからな!」 「嫌がらせだなんて。そちらこそ、言いがかりは止して欲しいですね」  余裕で遠山をかわしながらも、玄馬は心の声を上げていた。 (ホントは幸樹に会いに来た、なんて言いたいんだが)  しかし、そう言えば幸樹が遠山に責められるだろう。  彼の性格からして、私と寝たことは親代わりのマスターには話していないに違いないのだから。  あいさつくらいなら、いいかな。 「幸樹くん。昨日はありがとう」 「い、いいえ。こちらこそ」 「すごく、楽しかったよ」 「僕も、です」  二人の様子に、遠山は勘付いた。 (幸樹くん、まさか)  まさか、このヤクザ者に恋しちゃったのか!?

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