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第四章・4
いったん心を落ち着けようと、遠山はコーヒーを淹れた。
芳しい香りは、頭に上った血を下げてくれた。
「僕が、お出しします」
「そう? じゃあ、頼もうかな」
頭ごなしに叱っても、幸樹には効かない。
それどころか、返って頑なになってしまうだろう。
そう判断した遠山は、まずは彼を観察することにした。
(ついでに、あのヤクザもだ)
もし、遊びで幸樹をかどわかしでもするならば、許してはおけない。
その時は、命を懸けてでも幸樹の目を覚まさせる。
そんな覚悟を遠山がひそかに抱いていることも知らずに、幸樹は玄馬のテーブルに近づいた。
「キリマンジャロ、お持ちしました」
「ありがとう」
見つめあう、二人。
ほんの短い間であったが、特別な感情にあふれていた。
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