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第四章・7

 店を臨時休業にして、遠山は布団に横になっていた。 「どうせ、お客様も来ないしね」  自嘲気味の言葉だったが、次には不機嫌を口にした。 「あのヤクザのせいで!」  幸樹は遠山を看病しながら、身の縮む思いだった。  バラの花束は、店ではなく自室に飾った。  遠山が、見たくもない、などと駄々をこねるから。 「でも。九丈さんは本当にいい人で……」 「幸樹くん。ヤクザにいい人なんて、いないんだよ!」  私を見なさい、と跳ね起きた。 「おかげで、寝込んでしまった人間がここにいる!」 「遠山さん、起きていいんですか!?」 「え? あ、いや。あぁ、具合が悪い……」  何だかわざとらしく咳き込み、遠山はまた寝てしまった。  そして、幸樹に心配そうな目を向けた。 「あのヤクザと、どこまで行ってるの?」 「そ、それは」  もうエッチしちゃいました、と白状すると、遠山はもっと具合が悪くなるに違いない。  幸樹は、関係を小出しにすることにした。

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