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第四章・8

「実は昨夜、キス、しました」 「やっぱり……」  性的な繋がりがないと、あそこまで熱い視線を送り合わないだろう。  ごめんなさい、と頭を下げる幸樹に、遠山は静かな声をかけた。 「謝らなくてもいいけど、もうあの人とは終わりにしなさい。いいね?」  溜息をつき、遠山は低い声だ。  そして、悲しそうな目をする。  ああ、まただ。  僕は、遠山さんを悲しませてばかりいる。 「……はい。ごめんなさい」  何かあったら、すぐに呼んでください。  そう言い残し、幸樹は自分の部屋へ戻った。  待っていたのは、白いバラの花束。 『12本のバラの花ことばは、「私と付き合ってください」です』  はぁ、と息を吐き、幸樹は花束を愛でた。 「玄馬さん。……好きです」  遠山のために別れる決意はしたものの、まだ始まったばかりの熱い想いは、そう簡単に消せそうになかった。

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