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第四章・10

 うん、と言う玄馬の声は、少し物憂げだ。 (今後、マスターのお許しはもらえるのかな。幸樹との交際は) 「あの、僕たち。僕、もう、玄馬さんとは……」 『明日も行くよ、カフェに』  幸樹の言葉を遮るように、玄馬は早口で話した。 『明日も、君に会いに行く』  後は、すぐに切ってしまった。 「玄馬さん……」  幸樹の心は、揺れていた。  僕が玄馬さんとお付き合いすると、遠山さんを悲しませることになる。  玄馬さんが、好き。  でも、遠山さんのことも好きなのだ。  好きの種類が、違うのだ。  幸樹は、深い溜息をついた。  梅雨空から、雨が再び降り始めていた。

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