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第五章・2
「マスター。一日のお客さん、せいぜい15人くらいですから。ここはヤクザさん相手でも稼いでおきましょうよ」
「新庄くんは、リアリストだね……」
確かに、カフェの席は久しぶりにいっぱいに埋まっている。
ぶつぶつと文句を言いながらも、遠山はコーヒーを淹れ始めた。
その隙をついて、幸樹は玄馬の席へ小走りに駆けた。
「玄馬さん、来てくださったんですね」
「昨日、電話で言っただろう? 君に会いに来る、って」
「ありがとうございます。でも……」
そこで、遠山の声が響いた。
「幸樹くん! コーヒーセーキ4つ、上がったよ!」
ごめんなさい、と幸樹は玄馬のそばを離れた。
「やっぱりマスターは、ご機嫌斜めか」
玄馬は、コーヒーの前に出された、サービスのレモン水を一口飲んだ。
「どうしたら、幸樹くんを私に任せてくれるんだろう」
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