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第五章・6

「僕は、アジフライ定食にします。玄馬さんは?」 「……」  玄馬は、困惑していた。 『アジフライ定食・450円』 「安いな。気味が悪いくらいに」  これは、4500円の間違いじゃないか、と真顔で言う玄馬が、幸樹にはお茶目に見えた。 「じゃあ、焼肉定食にしますか? 650円ですよ」 「……任せよう」  二人で採光のいい席に座り、楽しくお喋りしながら食事をとる。  その姿は周囲に溶け込んでいた、と互いに思っていたが、ある種異様な雰囲気を醸していた。  なにせ玄馬は、若いながらも組のトップなのだ。  その圧倒的な存在感は、充分浮いて見える。  そして、黒づくめの男の前に座るのは、清楚で華奢な幸樹なのだ。  ギャップが嫌でも、目立つ。 「何か、視線を感じるな」 「玄馬さんが、カッコいいからですよ。きっと」  そうかな、と玄馬は思った。 「幸樹も、じろじろ見られてるぞ」  恋人が注目されて、胸騒ぎを感じていた。

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