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第五章・7
「幸樹は、学校で誰かに言い寄られたりしないのか?」
「時々あります。怖いから、お断りしてきましたけど」
怖い、とは。
「極道に身を任せるほど豪胆な人間が、何を怖がる」
「僕、Ωですから。興味本位で交際を求められても、嬉しくないんです」
それに、下手をすれば妊娠する危険がある。
「まだ学生なのに、妊娠したりすれば。遠山さんが、悲しみます」
「マスター、か」
そういえば昨日、幸樹はこんなことを言ってたっけ。
『遠山さんが、もう玄馬さんとはお終いにしなさい、って……』
「幸樹はどうなんだ。私とはもう、別れたいのか?」
「まだ始まったばかりなのに、そんな。意地悪を言わないでください」
良かった、と玄馬は胸をなでおろした。
どうやら幸樹は、マスターの言いつけを破ってでも、私と一緒にいてくれるらしい。
「嬉しいよ」
「恥ずかしい、です」
そこでちょうど、食事が終わった。
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