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第七章 二つの決意
長かった梅雨も、まもなく明けようという頃、遠山は一つの決意をしていた。
「新庄くん。最近、幸樹くんがよく友達と遊んでいるんだけど」
「ああ、昨日も夕食を一緒に食べる、って言って出ていきましたね」
「その友達、誰か解る?」
「知りませんが、恋人ができたんじゃないかな、って思いますよ」
やっぱり、と遠山は肩を落とした。
そのリアクションに、新庄は無邪気に笑う。
「大学生になったら、恋人くらいできますって」
「その相手が、問題なんだよ……」
きっと、幸樹の恋の相手は、あのヤクザの親分。
そう、遠山は察していた。
嫌がらせは続いている。
組員が、入れ代わり立ち代わり、カフェにやって来る。
おかげで通常の客が怖がり、入ってくれないのだ。
(よりによって、ヤクザ者に恋するなんて!)
これでは、亡くなった幸樹の母に、顔向けできない。
明日の朝、そのヤクザ者・九丈が現れたら。
(その時、片を付けよう)
そんな決意を、固めていた。
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