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第七章・4

 驚き、慌てたのは、松崎と幸樹だ。 「若! そんな重要事案を勝手に決められては困ります!」 「遠山さん! カフェを立ち退いちゃいけません!」  だが、と玄馬は渋った。 「そうでもしないと、この一本気なマスターは首を縦に振らないだろう」  しかし、と遠山は唸った。 「こうでもしないと、このヤクザは幸樹くんから手を退かないだろう」  事態が混乱を極めたとき、新庄がそっと手を挙げた。 「あの~。このカフェは残したまま、商店街の再開発はできないんですか?」  それには、松崎が答えた。 「できなくはないが、近代的なショッピングモール内に一軒古びたカフェが残ると、浮くだろう」 「逆にエモいですよ。レトロな店が、不協和音奏でると」 「そういうものか?」 「そんなもんです」

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