59 / 195
第七章・5
決まりました、と松崎は両手をパチンと合わせた。
「若。このカフェは残し、その少年とは別れてください」
「それでは私に、あまりにも利がないじゃないか!」
遠山は、もろ手を挙げて喜んでいる。
「それで行きましょう! 幸樹くん、ヤクザさんとは縁を切るんだ。いいね?」
「それはできません。遠山さん、僕の気持ちも考えてください!」
とにかく、松崎も遠山も、玄馬と幸樹を引きはがすことに躍起になっている。
「若、ご決断を!」
「幸樹くん、今ならまだ間に合う!」
もう、遅いんです!
幸樹は、涙をこぼして叫んでいた。
「遠山さん、ごめんなさい。僕はもう、玄馬さんから離れられないんです!」
ほとんど毎日、玄馬は幸樹に会っていた。
食事をし、映画を観て、ドライブをした。
水族館に行き、美術鑑賞をし、海を眺めた。
そしてキスをし、愛し合った。
玄馬との時間は、幸樹を彼から引きはがせないほど深く根を張っていたのだ。
ともだちにシェアしよう!