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第七章・6

「幸樹くん……」 「玄馬さんと別れるくらいなら、僕はこのカフェを出ます」 「いや、待ちなさい」 「遠山さんの迷惑にならないところで、そっと暮らします!」  これには、遠山もまいった。 (もし、幸樹くんを一人にしたら。このヤクザの親分に、四六時中付きまとわれるだろう)  そうすると……。  遠山の頭に、派手に着飾りタトゥーなど施した幸樹の姿が浮かんだ。 「絶対に、ダメだ! 一人で暮らすなんて、とんでもない!」  致し方ない、と遠山は譲歩した。 「その、何だ。親分さんと付き合ってもいいから、この家は出ないと誓いなさい」 「いいんですか!?」 「仕方がないだろう!」  しぶしぶながら、遠山は玄馬と幸樹の仲を認めたのだ。  幸樹の肩をしっかりとつかんで、玄馬に言った。 「親分さん。幸樹くんは、私の大切な預かりものだ。粗末に扱ったら、容赦しないよ」 「肝に銘じます」  

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