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第七章・8
「お待たせしました、キリマンジャロです」
「ありがとう、幸樹」
抱き合ったり、キスをしたりはできないが、二人の間には幸せな空気が満たされていた。
「これで良かったのかい?」
「玄馬さんの、おかげです」
それは違う、と玄馬はゆるやかに首を横に振った。
「幸樹の頑張りがあったからこそ、だよ。マスターの心を、動かしたんだ」
「僕は、あれで良かったんでしょうか」
それは、まだ判らない。
やはり玄馬は、首を横に振った。
「ただ、今できるベストは尽くしたんだ。後悔は、無いと思うよ」
「ありがとうございます」
幸樹は、そっと手を伸ばした。
玄馬はその手を、取った。
温かな、だがしっかりとした、握手だった。
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