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第八章・5
(若いのに、しっかりしてる)
玄馬は、さすが泉田さんの息子さんだ、と感心していた。
「お話は解りました。だが、お返事は待っていただきたい」
組同士の婚姻となると、当人同士の考えだけでは決められない。
幹部との話し合いも必要だ、と玄馬はその場を繕った。
「それで結構です」
少し、ほっとした表情を、翔は見せた。
それは、張り詰めていた緊張が、ふと解けた顔つきだった。
(何だ、可愛いじゃないか)
つい、そう思い、玄馬は慌てて否定した。
(幸樹には、負けるが)
翔と黒崎は用件のみで、コーヒーには口もつけずに去って行った。
二人の姿が見えなくなると、玄馬は松崎をにらんだ。
「また面倒な事案を引っ張り込んできてくれたものだな」
「いいお話だと思います。ご決断を」
私には、幸樹がいる。
そう、玄馬は松崎にはっきりと伝えた。
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