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第八章・7
幸樹と落ち合い、ランチをした後は、そのままホテルの部屋へ直行した玄馬だ。
「幸樹……」
「ちょ、どうしたんですか? ちょっと展開早すぎませんか?」
抱きしめ、キスをねだって来る玄馬の唇をよけながら、幸樹は笑い声だ。
「この後は、映画を」
「映画より現実の方が、劇的で数奇だよ」
時間はたっぷりあるんだ、と玄馬は初めての試みを幸樹に持ち掛けた。
「一緒に、お風呂入ろうか」
「二人で、ですか?」
はにかんで、目をそらす幸樹が可愛い。
そんな彼に、玄馬は先ほどの話を少しだけ打ち明けた。
「実は、組同士の付き合いで、少々困ったことが起きた」
玄馬の言葉に、幸樹は不安げな顔だ。
(やはり、いきなりプロポーズされた、とは言わないほうがよさそうだ)
玄馬は、後は黙って幸樹の背を押し、バスルームへといざなった。
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