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第八章・9

 これが、本当に本当の、玄馬さん。 (ああ、解ってたつもりだったけど。やっぱり玄馬さんは、ヤクザさんなんだな)  幸樹は、そっと手を伸ばした。 「触れても、いいですか?」 「いいとも」  幸樹は、勇ましい表情の虎の彫り物に、触れた。  それは、とても美しく感じられた。 (きれい。だけど、これを身に入れる時に玄馬さんは) 「玄馬さん、痛かったですか?」 「うん。少しね」  いつも黒を身に着けている玄馬さんは、もしかしてこの極彩色の彫り物を心の奥底に隠しているのかもしれない。 「幸樹、怖いか?」 「いいえ。玄馬さんは、玄馬さんです」 「……それが、聞きたかった」  ありがとう、と玄馬は幸樹を抱いた。  キスをし、初めて素肌を合わせた。  温かな体温を、分かち合った。

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