76 / 195

第九章・5

 湯の中で交わっているので、浮力が働く。  それでも玄馬の腰突きは、幸樹を夢中にさせた。 「あぁ! んぁ、はぁ、あぁ! 玄馬さん!」 (玄馬さん、いつもより、激し……ッ!)  目の前の彼は、きちんと整髪してもいない。  オールバックの理知的な印象は影を潜め、彫り物の虎のように野性的に求めてくる。 「んッ、あ! ふぅ、あぁああ!」  幸樹は、二度目の精を吐いた。 「元気だな、今日の幸樹は」 「ごめんなさい。バスタブの中に」  問題ない、と玄馬は笑う。  幸樹の精なら、汚くも何ともない。 「でも、気になるなら湯を抜こう」 「あ、ダメ! そんなことしたら!」  浮力があって、こうなのだ。  もし、ダイレクトに打ち付けられたら……。

ともだちにシェアしよう!