79 / 195

第九章・9

 シャワーですべてを流し、玄馬と幸樹はようやくバスルームから出た。 「何と、もうすぐ夕方だ」 「そんなに長く、お風呂に入ってましたっけ?」  バスローブをまとい、玄馬は冷たく冷えたワインをグラスに二つ、注いだ。 「飲まないか?」 「僕、まだ未成年ですから」  ミネラルウォーターを取り出す幸樹の笑顔は、素敵に輝いていた。 「そういう、何でもないことが。どうしてこんなに魅力的なんだろうね」 「え?」 「いや。いつ、一緒に飲めるかな。幸樹の誕生日は、いつだ?」  訊くと、3月で19歳になると言う。  20歳は、まだまだ先だ。 「遠いな」 「まだ8月ですから、ね」  こんなお子様に、どうしてここまで深入りを。  どうしてこんなに、深く愛してしまったのか。 「幸樹」 「何ですか?」  まったく無防備な、笑顔。  その頬に、玄馬は触れるだけのキスをした。 「愛してるよ」 「え? あ!? 何ですか、急に!」

ともだちにシェアしよう!