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第十章・2
「はい。待ち合わせです」
だから、お兄さんはお呼びじゃないです。
そんな気持ちを込めた返事をしたが、若者はへらへらとして全く応じない。
「綿菓子あげるから。俺たちと、遊ぼう」
「屋台のもの、何でも買ってやるよぉ」
困ったな、と幸樹が顔を曇らせたその時、人より頭一つ分背の高い姿が目に入った。
「玄馬さん!」
手を挙げ、玄馬に呼びかけると、彼もまた腕を軽く上げてくれた。
玄馬の姿格好を見た若者たちは、ぎょっとした。
黒い浴衣に、京扇子と信玄袋を手にした、見るからにやばそうな男。
「あ、彼氏、来たんだ」
「じゃあね」
逃げるように去っていく若者に、玄馬は眉根を寄せた。
「何だ、ナンパされてたのか?」
「ごめんなさい」
僕に、隙があるからですね、と幸樹は言ったが、そうではないと玄馬は考えた。
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