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第十章・3
「幸樹。浴衣が似合ってるぞ、すごく」
「ありがとうございます。玄馬さんも、カッコいいですよ」
黒い浴衣の玄馬に対して、濃紺と白の紺絞り。
定番だが、幸樹が身に着けると、ひどくキュートだ。
しかし、と玄馬は唇を曲げた。
「こんなに映えると、目立つな。ナンパされるわけだ」
もう、このまま連れて帰って独り占めしたい気分だが、今夜は花火も上がる。
では、こうしよう。
玄馬は、幸樹の手を握った。
「げ、玄馬さん」
「はぐれないようにな。行くぞ」
「はい……」
(嬉しいな。初めて、デートで手を握ってくれた)
甘酸っぱい気分の幸樹をよそに、玄馬は出店を見て回る。
少し覗いては、離れ。
離れては、別の店を覗き。
そうして、一軒の屋台に落ち着いた。
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