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第十章・5

「ありがとうございます!」 「どれ。着けてやる」  玄馬の手が、幸樹の華奢な手を取った。  そして、細い指にリングをはめる。   それを幸樹は、見守っていた。  揺らめく屋台の光は幻想的に、二人の手を浮かび上がらせた。 (改めて見ると、玄馬さんの指、すごく太い)  この太い指が、いつも僕の中に入って……。  ぐにゅぐにゅ、動いて……。  幸樹の耳は、熱くなった。 「どうした?」 「な、何でもありません!」 「今度、ショップで本物を買ってやるから。今夜はこれで我慢してくれ」 「これで充分、嬉しいです」  何だか、結婚式みたい。  そんな幸せな心地を、幸樹は感じていた。

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