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第十章・8
「花火、始まったぞ」
「は、はい」
夜空に開く、大輪の花火。
玄馬は、すっかり童心に帰っていた。
花火だなんて、何年ぶり、いや、何十年ぶりだろう。
「はっはは! すごい音だ!」
「そうですね!」
開催合図の花火が続けざまに上がった後、プログラムに沿って大会は進行していった。
祝い花火に、彩香。
雄大な音楽に乗せての、924発。
繊細な、郷愁の宴。
子どもたちに人気の、キャラ花火。
そして、千変万花の大フィナーレ。
幸樹は、瞬きもせずそれらの花火を見上げる玄馬を隣に、気もそぞろだった。
花火は、美しい。
その花火を観る玄馬もまた、美しいのだ。
「玄馬さん!」
幸樹は、花火の音に負けないよう、大きな声を上げた。
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