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第十章・9
「何だ?」
玄馬が、こちらを向く。
その唇に、幸樹は自分から口づけていた。
「……ッ!?」
驚いた様子の玄馬だったが、すぐにキスに応じてくる。
深く繋がり、舌と舌を絡め合い、甘くて熱い口づけを交わした。
花火は刹那に輝き、消える。
(でも、僕のこの想いは決して消えません。玄馬さん)
(幸樹、愛してる)
キスを終えても、見つめ合い、万雷の音の中での静謐を味わっていた。
二人で寄り添い、もたれ合い、手を握って花火の終焉を味わった。
全てのプログラムが終了し、スタンドから人が去り始めても、しばらくそのまま動けなかった。
「玄馬さん、ごめんなさい。花火、邪魔しちゃいました」
「邪魔なもんか。一生心に残る、最高の演出だった」
玄馬は、柔和な顔つきをしていた。
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