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第十章・10

 そこへ、幸樹以外の声が玄馬を呼んだ。 「九丈さん、こんばんは!」 「君は、泉田……、翔くん」 「覚えてくれたんですね。嬉しいです」  翔は若頭の黒岩を従え、玄馬のそばにやって来た。  人ごみの中でも、玄馬はひときわ目立つ存在だったので、翔は難なく彼を見つけることができたのだ. 「花火にいらしてたんですね。私から、お誘いすればよかった」 「いえ。今夜は、連れがいますんで」  ちら、と翔は玄馬の隣の幸樹を見た。  その指には、シルバーのリングが輝いている。 (九丈さん。まさか、この人と……)  試すつもりもあって、翔は玄馬に問いかけた。 「例の件、お考えいただけましたか?」 「いえ、まだ、ちょっと。何せ、事がことですので」

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