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第十一章・7
ずらりと並んだ美しく輝くリングを前に、幸樹は目をぱちぱちさせていた。
(0の数、数えきれない! 一体、いくらなの!?)
「幸樹は指がきれいだから、このフェディはどうだ?」
「え?」
「こっちのコロナも捨てがたいが」
「え?」
「いや、マリーミーもいいぞ」
「え?」
何だか、玄馬の方が楽しそうだ。
やけにおとなしい幸樹に、彼は優しい声をかけた。
「値段など、気にしないで欲しい。これは、私のけじめでもあるんだ」
「玄馬さんの?」
「そうだ」
ダイヤモンドの付いていない指輪を選ぶことが、幸樹にできる唯一の遠慮だった。
ペアのリングを玄馬は黒いカードを使って購入し、その足でビル内のフレンチレストランへ入った。
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