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第十一章・8
ランチを済ませ、食器が下げられ、食後のコーヒーを一口飲むと、玄馬は待ちきれないようにリングをテーブルの上へ出した。
「幸樹へ、プレゼントだ」
「すみません……」
「ここは、ありがとう、と言って欲しいな」
「あ、ありがとうございます」
そして玄馬はリングをそっとつまむと、幸樹の左手にはめた。
「薬指に……?」
「幸樹、結婚してくれ、とは言わない。いや、言えない」
私はこの通りの、極道だ。
そう、玄馬は続けた。
「幸樹を抗争に巻き込むくらいなら、結婚はできないと思ってる。だが、君を愛する気持ちに変わりはない」
「玄馬さん」
そこには、真剣な男の眼差しがあった。
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