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第十一章・9
「昨夜は、翔くんの話などして……、すまないと思っている」
「玄馬さんに、プロポーズした人ですね」
正直、驚いたし、悲しかった。
幸樹は、素直にそう告げた。
「僕と玄馬さん、もう終わりなのかな、って思って。それで」
「悲しいことを、言わないでくれ」
幸樹の手を握る玄馬の力が、強くなった。
「指輪で君をつないでおけるとは、思っていない。だが、私はこんなものにすがることしかできない、弱い男だ」
「こんなもの、だなんて。昨日のシルバーだって、僕の大切な宝物です」
ありがとう、と玄馬は幸樹の手を、両手で包んだ。
さすり、指と指輪の境を、しきりに撫でた。
「私は、この揃いのリングを幸樹だと思って、大切にするよ」
「玄馬さん、ありがとうございます」
幸樹の瞳には、清い涙が浮かんでいた。
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