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第十一章・10
幸樹の指に光るリングと、瞳に光る涙。
それを見た時に、玄馬は確信を覚えた。
(これで泉田組の翔くんが、何を言ってきても跳ね返せる)
松崎の言う通り、翔との縁談は双方にとって美味しい話ではある。
互いの力を合わせれば、より強固な勢力を保つことができるのだ。
翔は、美しい少年だった。
しっかりした、健気な少年だった。
(だが、私には幸樹がいる)
翔には悪いが、先に出会ってしまったのだ。
幸樹に。
「幸樹は、私に勇気をくれる魔法使いだ」
「急に、どうしたんですか?」
「私らしくなかったかな?」
「はい」
泣き笑いの幸樹は、目を赤くしている。
(幸樹。これが私の、密かな婚約だ)
この先、たとえ運命が二人を引き裂いても、私は君に全てを捧げよう。
玄馬は、胸の内で永遠を誓っていた。
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