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第十二章・2

 そのころ事務所社長室の玄馬は、電話で連絡を受けていた。 『社長、若い男から電話が入ってます』 「誰だ。名は?」 『それが、ショウです、としか』 「いい。繋げ」  玄馬は、すぐにピンときた。  翔だ。  泉田の次男坊。 「早く返事を、と言うことかな」  厄介なことだ、と玄馬は外線保留を取った。 『こんばんは、九丈さん。泉田です』 「こんな遅くに。泉田の親父さんに、何かありましたか?」 『いいえ。私の用向きです』 「ご用件は?」  玄馬は無意識のうちに、薬指に付けたリングを撫でていた。

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