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第十二章・10

 さんざん苛め抜かれ、翔はぐったりとその白い身体をベッドに投げ出していた。  口も尻も、黒岩の精で汚れている。  腹は、自らのもので濡れている。  そんな翔の身体を、黒岩はていねいに拭いていた。  固くしぼった清潔なタオルで、きれいに清めていた。 「うぅ……、黒岩……」 「翔、好きだ。愛してる」 「私も……、黒岩のことを……」 「いいから、もう休め」  気を失うように眠ってしまった翔だが、その顔は安らかだ。  その顔にかかる髪を、指先で梳いた。 「こんなに。こんなにも愛している。だのに」  どうして、翔は泉田の家に生まれてきてしまったのだろう。  ただの通りすがりの人間では、なかったのだろう。  だが、ただの人間では、こんなにも深くは愛せなかっただろう、とも思う。  その気高い精神を、私は愛してやまないのだ。 「そのうち、この指には九丈さんの婚約指輪がはめられるんだな」  黒岩は、小さな翔の手を取って、その薬指にキスをした。  その指に自分の指を絡めて、浅い眠りに就いた。

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