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十三章 一件落着
翔とランチを取る前に、玄馬は幸樹のいるカフェに来ていた。
「はい。キリマンジャロです」
「ありがとう」
そして彼を引き留め、今日の予定を告白した。
「幸樹。実はこの後、翔くんと会うことになっている」
「え……」
翔くんと言えば、玄馬さんにプロポーズした人!
幸樹は動揺したが、玄馬はそれをなだめるように話した。
「会って、私の方には結婚の意思がないことを話すよ」
「玄馬さん」
「私には、幸樹しかいないからね」
そう言って、玄馬は薬指のリングを幸樹に見せた。
「ずっと、着けてくださってるんですか?」
「もちろん。幸樹は、シルバーの方を着けてるんだな」
「高価な指輪です。失くしたりしたら、大変ですから」
「失くしても、また買ってあげるよ」
そこへ、マスターの声がした。
「幸樹くん、ちょっと来てくれる?」
その声に、幸樹はぴょこんとお辞儀をすると、玄馬のもとを去って行った。
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