114 / 195

第十三章・2

「他のお客様もいるんだから、九丈さんと話し込んじゃダメだよ」 「ごめんなさい」  そんな幸樹の指には、見慣れないリングが光っている。 (しかも、薬指になんて!)  遠山は、コーヒーを味わう玄馬を見た。  出会って間もない頃には、ただの忌々しい奴だったが、今の遠山には解る。  彼の性根は実に筋の通った、気持ちのいい男なんだ。 (ヤクザなんかじゃなかったら、幸樹くんを任せてもいいのになぁ)  堅気の幸樹くんと、ヤクザの九丈さん。  どう考えても、歓迎できない組み合わせだ。 (近いうちに、幸樹くんに九丈さんとの結婚だけは認めない、と釘を刺しておかなきゃな)  そう思いながら、遠山はコーヒーを淹れていた。

ともだちにシェアしよう!