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第十三章・3

 お好きな音楽は、なんですか?  最近、映画をご覧になりましたか?  花火は、とても綺麗でしたね。  ランチをしながら、翔はよく喋った。  玄馬がそれに一つひとつ答えると、翔もまた、返事をよこした。  まるで、自分で自分を玄馬に紹介するかのように。 「今日は、黒岩さんは御一緒ではないんですね」  玄馬が何気なく投げたその言葉に、翔は手を止めた。 「ほ、本日は、休暇を取らせています」 「そうですか」 (彼は、翔くんのボディガードだと思っていたが)  常に、影のごとく翔に付き従い、彼を見守る黒岩の姿を、玄馬は考えた。  花火を観る時にさえ、傍にいたのだ。  何か今日に、特別な違いを感じていた。 「それより。この後、ご予定はあられますか? もしよろしければ」  よろしければ……。  翔の目が、縋るような視線を玄馬によこした。

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