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第十三章・4
(まさか、部屋まで用意していたとは)
外に洩らせない、大切な話がある、と翔はホテルの一室に玄馬をいざなっていた。
「レストランで話して、誰かに聞かれると困りますから」
「そうですか」
泉田組の組長の、病の進行具合かな、と玄馬は思っていた。
ところが、部屋へ入ってソファに掛けると、翔がやたらと体を近づけてきたのだ。
「翔くん?」
「あの。あ、そうだ。お酒、召し上がりますか?」
「いえ。今日は自分で運転してきましたので」
「そうですか。私は、少しいただいてもいいですか?」
翔くんは成人してるのかな、と玄馬はいぶかしく思ったが、本人は平気でグラスにワインを注いで飲んでいる。
一体この子は、何を考えているのか。
それとも、何か企んでいるのか……?
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