117 / 195

第十三章・5

 翔の心臓は、どきどきと早鐘を打っていた。 (平気だと思っていたのに。組のためなら、この身体さえ捨ててもいいと覚悟したのに)  だのに、いざ部屋にこもって玄馬と二人きりになると、腰が引けた。  手が震える。  その手には、冷たい汗をかいている。 (ああ、黒岩。私に勇気を!)  黒岩の名を唱えたのは、逆効果だった。  いやでも愛する人との日々を思い出し、いっそう心が強張った。  思い切ってワインを飲んで少し酔い、翔は玄馬にすり寄った。 「九丈さん。いえ、玄馬さん。私の身体、試してみませんか……?」 「翔くん」 「いずれパートナーになるのなら。身体の相性も大切だと思いませんか?」 「大人をからかうものでは、ありませんよ」  からかってなど、いません。  翔は、さらりと服を脱ぎ始めた。

ともだちにシェアしよう!