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第十三章・7

「好きです、九丈さん」 「……」  そのキスをも、玄馬は観察した。  深く繋がり、舌を絡めてくる翔。  ひらめく舌は優雅に踊り、玄馬の咥内をいい具合に刺激する。  翔は、大人のキスを知っている。  しかし、そんな情熱的な口づけに一向に乗ってこない玄馬に、翔は戸惑った。 「九丈さん……?」 「翔くん。このキスは、どこの誰とレッスンしたんだ?」 「そ、それは」 「君には、誰か他に好きな人がいる。そうだね?」  白かった顔に、赤みがさした。  図星、というところか。 「もしかして、その相手は黒岩さん?」 「違います! 黒岩は、関係ありません!」  強い口調の翔だったが、涙がぽろりと一粒こぼれた。  ワインで酔ったことが、裏目に出たようだ。  翔は、知らぬ間に素直になってしまっていた。

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