119 / 195
第十三章・7
「好きです、九丈さん」
「……」
そのキスをも、玄馬は観察した。
深く繋がり、舌を絡めてくる翔。
ひらめく舌は優雅に踊り、玄馬の咥内をいい具合に刺激する。
翔は、大人のキスを知っている。
しかし、そんな情熱的な口づけに一向に乗ってこない玄馬に、翔は戸惑った。
「九丈さん……?」
「翔くん。このキスは、どこの誰とレッスンしたんだ?」
「そ、それは」
「君には、誰か他に好きな人がいる。そうだね?」
白かった顔に、赤みがさした。
図星、というところか。
「もしかして、その相手は黒岩さん?」
「違います! 黒岩は、関係ありません!」
強い口調の翔だったが、涙がぽろりと一粒こぼれた。
ワインで酔ったことが、裏目に出たようだ。
翔は、知らぬ間に素直になってしまっていた。
ともだちにシェアしよう!