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第十四章 台風接近
「いいなぁ。翔くんと、黒岩さんは」
あの二人なら、何の障害もなく結ばれることだろう。
しかし、私と幸樹となると。
腕組みをして怖い顔をし、終いにはそっぽを向いてしまう遠山を思い浮かべ、玄馬は苦笑いをした。
そして、そっと首を横に振った。
「たとえ一緒になれなくても、私は生涯をかけて幸樹を愛し続ける」
そう、誓ったのだ。
余計な妄想は振り払い、玄馬はデスクの書類を手に取った。
商店街の再開発計画が、本格的に動き始めている。
やるべきことは、山のようにあるのだ。
玄馬は、このところ仕事が忙しく、幸樹に会っていなかった。
残業、徹夜は当たり前。
何とか踏ん張ってはいたものの、そろそろ体内の幸樹成分が不足していた。
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